青色申告をしよう(11)/各種控除の入力
このシリーズは、会計ソフト「やよいの青色申告」を使って、帳簿を作成したり申告書を作成したりする方法を解説していきます。細かいことは抜きにして、「こうすれば確定申告ができる」という一連の手順を解説します。
別シリーズ「白から青申StepUp」では、白色申告と青色申告の違いなども細かく解説しています。これまで白色申告をしてきてなかなか抜け出せない方や、青色申告の本質的な要点などを知りたい方は、そちらの別シリーズも併せてご覧ください。
仕訳の入力は全部終わりました。最後に1つ重要なことが残っています。それは各種控除の入力。控除は事業の取引ではないので、仕訳日記帳には入力しません。確定申告時に提出する書類に直接書き込みます。
控除の入力を忘れると不要な税金がごっそり持っていかれます。忘れずに入力しましょう。
控除とは
売上から仕入れや経費を差し引いた分が所得です。所得とはつまり事業の利益そのものであり、サラリーマンの場合の額面給与に相当する数字です。
そこからさらに、控除と呼ばれる金額を引いた分の課税対象所得に対して、5%とか10%とかの超過累進税率に従った税率がかかり、納めるべき所得税となります。
この控除が多ければ多いほど課税対象所得が少なくなり、結果的に所得税が少なくなります。なので、忘れずに控除を入力しましょう。
基礎控除
全ての事業所得者は、必ず48万円の基礎控除を受けることができます。やよいの青色申告では特に入力する必要はありません。常に48万円の基礎控除を考慮した自動計算が行われ、確定申告書に印字されるようになっています。
青色申告特別控除
所得税確定申告書Bを開いてみましょう。
※所得税確定申告書Bの画面は、翌年1月末頃にならないと開くことができません。なぜかと言うと、毎年法律が微妙に変わるので確定申告書のフォーマットがその頃にならないとはっきりしないからです。やよいの青色申告では、1月末頃に確定申告書モジュールがダウンロードできるようになります。
この例では、課税対象所得は現在のところ、右上の2,803,000円です。
そして右側の中ほど。青色申告特別控除額のところに650,000円という数字が入っているかどうか確認しましょう。最初に事業所データを作ったときの作り方や手順によっては、ここに数字が入っていない場合があります。そういうときは、一旦確定申告書Bを閉じて、青色申告決算書を開きます。
右下の青色申告特別控除額のところをクリック。
このような画面が表示されますので、「65万円の青色申告特別控除を受ける」を選択し、控除額が650,000円になっていることを確認します(なっていなければ650,000と入力します)。そして、右上の「帳票に反映」をクリック。
これで65万円の控除を受けることができます。
これまでいろいろ苦労して青色申告のための帳簿を作ってきたのに、65万円の控除が入ってなかったら全てが水の泡です。気をつけて!
2020年の確定申告(2021年2月~3月提出分)からは、55万円控除と65万円控除の2段階になりました。電子帳簿保存またはe-Taxを行うと65万円控除を受けることができますが、紙で申告すると55万円しか控除を受けることができません。詳しくは2020年基礎控除引き上げの記事をご覧ください。
社会保険控除
国民年金、健康保険、労働保険などの社会保険料は個人の出費なので事業の経費とすることはできませんが、その代わりに全額を社会保険控除とすることができます。
確定申告書Bの第二表で、赤丸のところ(下図の右上)をクリック。
入力画面が出てきますので、国民年金、健康保険、労働保険などの種類と金額を入力しましょう。e-Taxで電子申告する場合は、「電子申告時に、第三者作成書類の提出省略を行う」にチェックを入れてから入力しましょう。
金額は、その年に支払った額の合計を入力してください。前年分の後払いであっても、翌年分の前払いであっても、家族分の支払いであっても、とにかく自分がその年に支払った額の合計を入力します。
これらの社会保険料の支払いに関しては、支払先から控除証明書というのが送られてくるはずです。この控除証明書は確定申告時に税務署に提出しなければいけませんので、大切に保管しておいてください。ただし、e-Taxで電子申告する場合は、この控除証明書(=第三者作成書類)の提出を省略することができます。
生命保険控除
民間の保険会社に支払った生命保険料に関しても、その一部を控除することができます。
さっきと同じく、確定申告書Bの第二表で赤枠のところをクリック。
こんな入力画面が出てきます。社会保険料控除の場合と同じく、e-Taxで電子申告する場合は「電子申告時に、第三者作成書類の提出省略を行う」にチェックをしてから各金額を入力するのですが、旧制度?新制度?介護医療?なんじゃらほい…
どこに何を入力していいかわからなくなりそうですが、ご安心あれ。生命保険料を支払った保険会社から、9月か10月頃に控除証明書が送られてきているはずです。保険会社によってフォーマットやサイズが違いますが、大体こんな感じです。
そこに必ず、旧制度とか新制度とか介護医療とかが書かれています。その通りに金額を入力しましょう。また、控除証明書は9月か10月に送られてくるわけですが、「仮に12月までちゃんと支払ったとしたらこれだけの金額になるよ」という支払見込額が必ず書かれています。この見込額のほうを入力しましょう。
金額を入力すると、控除額が自動的に計算されて表示されます。この控除額の計算はとてもややこしいので、自分で計算するのは面倒です。でもやよいの青色申告は大天才なので、一発KOですぞ。
サラリーマンの経験がある方なら、この生命保険料控除額を年末調整で書いた記憶があると思います。そこでむちゃくちゃ難しい計算式に従って計算させられて金額を書き込んだ苦い記憶。年末調整というのは確定申告の簡易バージョンなので、生命保険料控除の考え方は同じです。あの難しい計算をやよいが自動的にやってくれるなんて、おお、なんと素晴らしい…。
あとこれは僕の私見なんですが、民間の保険会社が発行する控除証明書はとてもわかりやすいと思います。「この数字をそのまま年末調整や確定申告の書類に転記すべし」というのが一目瞭然です。国が発行するひたすらわかりにくくて原始時代から進化しない書類に比べて、お客様重視の民間保険会社はやっぱりこういうところもぬかりなくてナイスですね。
生命保険の控除証明書も確定申告時に提出しなければいけないので、大切に保管しておきましょう。ただしこれに関しても、e-Taxで電子申告する場合はこの控除証明書(=第三者作成書類)の提出を省略することができます。
医療費控除
病院の診察代や処方箋薬局で購入した薬代は、医療費控除の対象となります。ただし、合計額が年間10万円以下だと控除額はゼロになります。
10万円超えているなら、医療費に関する項目を入力しましょう。超えてなかったら入力するだけ無駄ですが、今後のための入力の練習ってことで、やっておいてもいいかもしれませんね。
厳密には、総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額×5%を超えたときに医療費控除が発生します。例えば総所得金額が150万円の場合は、医療費が75,000円を超えていれば医療費控除が発生します。
医療費控除を入力するには、確定申告書Bの第一表の左下あたりの「医療費控除」のところをクリックします。
こんな感じの入力画面が出ます。この画面の上側の「医療費通知に関する事項」に、通常の医療費を入力していきます。
下側の「医療費に係る使用証明書等の記載事項」は、例えば寝たきり介護で購入した成人用おむつ代などを入力します。この場合、医師等が発行した「おむつ使用証明書」が、控除の証明となる第三者作成書類に該当します。
自分や家族の状態に関する控除
自分や家族の状態に関して、いろいろ控除があります。
- 寡婦(寡夫)控除・・・離婚または死別によるシングルマザー、シングルファザー
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
これらにはいろいろ条件があり、俗に言う「103万の壁」なども関係してきます。条件に当てはまっているかどうかわからない場合はとりあえず入力してみましょう。大天才やよいの青色申告様が自動的に判定してくれます。おお、なんと、なんと素晴らしい…。
確定申告書Bの第二表の大体このあたりを適当にクリック。
いろいろ入力する画面が出てくるので、自分や家族の状態に応じてそれぞれ入力しましょう。各種類の控除額がいくらになるかはやよいの青色申告が自動的に計算してくれます。
その他の控除
その他の控除として、
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 寄附金控除
などがあります。詳細は割愛しますが、入力方法は他と同じなので、該当する場合は入力しましょう。
どれだけ控除されたかな?
さあ、控除の入力は全部終わった。ドキドキの集計タイム。確定申告書Bの第一表に戻ってみましょう。
どどーん!
左下に、いろいろ入力した控除額が書き込まれています。
そして、課税対象所得は2,166,000円に、納める所得税額は70,500円になっています。この記事の最初の(控除入力前の)所得税額と比べてみてください。
納める所得税額:135,500円→70,500円
おめでとう! 65,000円も税金が減ったぜ! 苦労して入力した甲斐がありましたな。さらに驚くなかれ、ここでは計算されないけど、翌年6月頃に支払う住民税も60,000円ほど減ります。合計で12万円以上税金が減ったわけでございまして、恐るべし控除パワーと言うしかあるまいて。
控除によってどれくらい税金が減るかは人それぞれですが、かなりでかい差になることは間違いないです。ちまちま10円100円の仕訳をして所得税額を厳密に計算してたのに、最後の控除の威力が凄すぎて「仕訳の効果しょぼい」と思いたくもなるところですが、そこはそれ、仕訳も控除も正しい入力をすることが何より大事です。
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