雑所得と給与所得のフリーランスへ持続化給付金対象拡大

本日2020年6月26日、雑所得や給与所得で確定申告をしていたフリーランスでも持続化給付金の申請ができる、給付金対象拡大の申請要件の詳細が発表されました。申請受付は6月29日に開始されます。

スポンサーリンク

持続化給付金とは

持続化給付金とは、コロナウィルスの影響により売上が激減した個人事業主(フリーランス)や中小企業に対し、最大100万円(中小企業は最大200万円)の給付金がもらえるという制度です。

2020年5月1日より持続化給付金の申請受付が開始されましたが、当初給付の対象だったのは法人と、事業所得で確定申告をしていた個人事業主のみでした。

個人事業主という括りの中に含まれるフリーランスと呼ばれる人も給付の対象者であるとして開始されたこの持続化給付金制度ですが、5月1日以降、フリーランスと呼ばれる人の中には事業所得で確定申告をしておらず、雑所得や給与所得で確定申告をしている人が一定数居るということが明らかになってきました。

これらのいわゆる雑所得フリーランス・給与所得フリーランス(本記事では「雑フリ給フリ」と略します)も給付の対象とすべきだ、という声が多くあがり、6月29日から雑フリ給フリも給付の対象となるはこびとなりました。

雑フリ給フリが給付対象ではなかった当初の時点での持続化給付金の解説と、雑フリ給フリへ対象が拡大するまでの経緯は、以下の記事をご覧ください。

雑フリ給フリへ持続化給付金の対象拡大

これまでは持続化給付金の対象者は、法人と、事業所得フリーランス(個人事業主)だけでした。法人か事業所得フリーランス(本記事では「事業フリ」と略します)かによって、細かい部分で申請要領が違います。

6月29日からはこれに加え3つ目の申請パターンとして、雑フリ給フリも申請が可能となります。

給付対象拡大

5月1日から既に始まっている法人向け・事業フリ向け持続化給付金と同様、各月の売上を前年同月と比較し、前年比50%以上減の月がある人が、給付の対象となります。 このあたりの判定法や計算方法については、持続化給付金100万円をもらうにはの記事をご覧ください。

そしてこれが一番大事なポイントになるのですが、雑フリ給フリの申請者が「事業性があるとみなせる性質の所得を得ているフリーランス」であることが、給付の条件となります。

本記事では、中小企業庁発表の申請ガイダンスを読み解きながら、その条件を詳しく解説していきたいと思います。

申請ガイダンスはこちら。また、雑フリ給フリ拡大後の持続化給付金に関するお知らせページにも詳しい説明があります。

フリーランスであることの証明

雑フリ給フリ向けの持続化給付金の対象者は、フリーランスである必要があります。しかし、「フリーランス」という言葉は「自由な働き方」という生き様を表す言葉であり、「我、フリーランスなり」と言い張ればそれはフリーランスであるということになってしまいます。

これでは申請のルールは定められないので、雑フリ給フリ向け持続化給付金の申請要領においては、以下の条件に当てはまる人を「フリーランス」であると定め、対象者としています。

給付対象
持続化給付金申請要領

まず、業務委託契約等による事業活動であることが条件となります。逆に言えば、雇用契約の人はただのサラリーマンなので対象外ということになります。

また、「主たる収入」であることも条件となります。事業フリ向け持続化給付金の場合はこの条件はありませんでした。例えば、給与所得を主たる収入とし、副業としてそこそこの規模(だけど主ではない程度)の事業所得を得ていた場合は、給付の対象となっていました。

しかし、雑フリ給フリ向け持続化給付金においては、「主たる収入」であることが条件となります。この条件は、「事業所得として申告しておらずしかも主たる収入でないのであれば、さすがに小遣い稼ぎの副業と見分けが付かないので、給付の対象と認めるのは難しい」という意味だと思います。決して「そんな小さい規模の収入はフリーランスと認めない」というような収入差別をしているわけではないと思います

2つ目の注意点ですが、事業所得が1円でもある人は、雑フリ給フリ向け持続化給付金の対象にはなりません。事業所得がある人は、初期から申請受付が開始している事業フリ向け持続化給付金のほうの対象となり、そちらのほうの申請要領に従います。

例えば、コロナの影響を受けやすい主たる収入が(業務委託契約の)給与所得で、それに加えてコロナの影響がほとんど無い少額の副業を事業収入としている人。そのようなパターンの人は、雑フリ給フリ向けの持続化給付金の申請はできません。事業フリ向けの申請要領に従って、対象となっていれば申請をしてください。

3つ目の注意点は、被扶養者ではないということです。一般に、例えば親の収入で生活していて、年間収入が130万円未満の子供(学生など)は、扶養家族となります。このような被扶養者は、給付の対象にはなりません。

被扶養者であるということはつまり、自分1人では生活するのが難しいほどの収入(130万円未満)しかなく、しかもそれを補って養ってくれる人(親や配偶者など)が居るという状態です。このような被扶養者は、養ってくれている親や配偶者などが給付を受ける休業補償金や持続化給付金に頼るべき、というのがその理由だと思われます。

給付条件のポイント

  1. 業務委託契約である
  2. 主たる収入である
  3. 被扶養者ではない

具体的な提出書類(1)/前年の確定申告書

それでは、具体的な申請時の提出書類を見ていきましょう。これらの提出書類を正しく揃えられる人がすなわち、前述の給付条件を満たしているということになります。

まずは、収入が減少したことを証明するために、前年(2019年)の確定申告書が必要になります。

給与が全て源泉徴収されている場合は確定申告の義務はありません。法人向けや事業フリ向けの申請のときはそのようなパターンはありえませんでしたが、雑フリ給フリ向けの申請の場合はありうる話です。その場合は確定申告書が無いわけですが、「特例A-1.確定申告を要しないこと及び収入金額に係る申立書」を使うことで同様に申請できます。ただし、税理士の確認と署名が必要です(詳しくは後述)。

確定申告書

申請時にこの確定申告書を添付することになります。特に左上の「収入金額等(ア)~(サ)」が重要なポイントです。

この確定申告書は、申請時に添付するだけではなく、申請時の入力画面への転記にも使います。わかりやすい入力画面になっているので、確定申告書を見ながら転記していきましょう。

ただし注意点があります。申請時の入力画面での「給与」と「雑」の欄には、業務委託契約による収入のみを入力しなければいけません。

例えば2か所の会社から給与をもらっていて、1つは通常の雇用契約(普通のサラリーマン)で例えば200万円、もう1つは別の会社で業務委託契約(フリーランス的)として働いていて給与所得を例えば120万円もらっている場合。

その場合は、申請時の入力画面には120万円を入力します。確定申告書の(ク)の「給与」には320万円と書かれていて入力画面の数字とは異なることになりますが、問題ありません。「問題ありません」というより、必ずそのように入力しなければいけません。

申請ガイダンスに赤バックで強く警告が書かれているように、入力画面で業務委託契約以外の収入も含めた金額を入力した場合、不正受給とみなされ、最悪の場合刑事告発もありえます。

そしてここで、雑所得や給与所得が「主たる収入」であることを証明する必要があります。雑所得(ク)のうち業務委託契約のある所得と、給与所得(カ)のうち業務委託契約のある所得の合計を「業務委託契約等収入(経費を引く前の収入金額)」と呼んだ時、

  • 業務委託契約等収入 > (ウ)不動産収入
  • 業務委託契約等収入 > (エ)利子収入
  • 業務委託契約等収入 > (オ)配当収入
  • 業務委託契約等収入 > (キ)公的年金等

を同時に満たさなければいけません。つまり、他のどの収入よりも、業務委託等収入のほうが多いことが必須条件です。

※(ケ)(コ)総合譲渡と(サ)一時は比較しなくても大丈夫です。いくら金額が多くてもかまいません。

この入力画面は、法人向けや事業フリ向けの入力画面に比べて、大幅に親切になっていると思います。ただし注意点もありそうです。それは給付条件の1つである「雑または給与所得が他の所得よりも多い(主たる収入である)」に合致しない場合でも自動判定は行われず、申請画面を先に進めることができてしまうという点です。入力は慎重に行いましょう。

本節冒頭で触れた「特例A-1.確定申告を要しないこと及び収入金額に係る申立書」については、持続化給付金事務局が用意する以下の申立書に必要事項を記入します。

特例A-1

この申立書には税理士の署名または捺印が必要になります。

これはあくまで、確定申告義務の無い人に対する特例です。申告義務はあるのに単純に無申告だった人はこの特例は使えません。

具体的な提出書類(2)/国民健康保険証

申請者が被扶養者でないことを証明するために、国民健康保険証の写しを添付する必要があります。一般のサラリーマンは通常、国民健康保険ではなく社会保険(の中の健康保険)に加入しているので、雇用契約の給与所得者(=一般のサラリーマン)ではないことの証明も兼ねています。

ただし、フリーランスであっても国民健康保険ではない健康保険に加入しているパターンがあります。

1つ目は、会社員を辞めてフリーランスになった直後のケース。そのような場合、会社員時代に加入していた社会保険(の中の健康保険)は資格を喪失することになりますが、最長2年間は「任意継続」という形で資格を継続することができます。急に国民健康保険に切り替えるのが困難な場合の経過措置として存在するこの任意継続の期間中の人は、会社員時代の健康保険証+退職証明書を提出することによって、持続化給付金の給付要件を満たすことができます。

2つ目は、企業単位や業種単位で設立された「健康保険組合(呼び方はいろいろあり)」に加入している場合。この健康保険組合もまた、個人事業主等が加入でき、健康保険の機能を有する保険の一種です。それに加入していることを示す書類を提出することで、持続化給付金の給付要件を満たします。

3つ目は、後期高齢医療被保険者。この場合も、その保険証の写しを提出すればOKです。

要するに、個人事業主が加入できる保険(大半の人は国民健康保険)に加入していることを示せばOKです。

具体的な提出書類(3)/業務委託契約書

申請する雑所得や給与所得が、業務委託契約に基づく収入であることを証明する必要があります。これはつまり、「業務委託契約ではない=雇用契約である=一般のサラリーマンである」という人を対象から除外することになります。そのような一般のサラリーマンは休業補償等で減収が補償される仕組みになっているので、持続化給付金とは別のカテゴリーになります。

業務委託契約の証明

業務委託契約等収入であることを証明するために必要な提出書類は、上記①②③のうちのいずれか2つです。ただし、同じグループから2つ(支払調書と源泉徴収票だけの2つ)ということはできません。また、いくつか許可されていない提出の組み合わせもあり、厳密には以下の表の通りになります。

提出書類の組み合わせ

少し複雑な表ですが、しっかり理解して、提出する組み合わせを決めましょう。

ここでは、ポイントをいくつか補足します。

まず①のグループですが、業務委託契約書が発注者との間で既に締結されていれば何の問題もありません。しかし、働き方が多様化している昨今は、このような契約書を交わさないケースも多々あります。

そのような場合は、持続化給付金事務局フォーマットによる「持続化給付金業務委託契約等契約申立書」で代替することができます。要するに、「持続化給付金の申請をしたいので、自分の収入が業務委託的なものであることを誓いますよ」という申立書です。

持続化給付金業務委託契約等契約申立書

これまで口約束で仕事を請け負っていて契約書を交わしたことが無いような場合でも、今から「これは業務委託契約でした」と誓えば、持続化給付金の給付要件として認められるということです。

ただし、申請者(自分)と発注者の双方の署名捺印が必要です。必ず、発注者に「これにサインして」とお願いする必要があります。

本来は業務委託契約書というのは、持続化給付金がもらえるかもらえないかという以上に重い意味を持つ書類です。なので、今から発注者に「契約書を交わしてください」とお願いしても受け入れてもらえない可能性があります。しかしこの申立書は、単に持続化給付金の給付要件を満たすための意味しかありません。それはつまり、発注者がこの申立書に署名をするハードルが低くなるということです。「これに署名してください」とお願いすれば、受け入れてもらえる可能性は高いでしょう。

続いて②のグループ。給与ではない報酬(雑所得や事業所得)の場合、支払調書が発注者から発行されます。しかし、支払調書には発行義務がありません。発注者にお願いしても、そもそも発行てもらえない場合があります。

また、給与として報酬をもらっている場合は、源泉徴収票が発行されている可能性が高いです。しかし稀に源泉徴収票が発行されない(源泉徴収されていない)場合があります。また、源泉徴収票を添付して確定申告を行った場合は、源泉徴収票は手元にはもう残っていません。

このように、支払調書も源泉徴収票も無い場合は、支払明細書によって代替することができます。

支払明細書

支払明細書の様式は自由ですが、必ず支払者が発行して署名または捺印したものである必要があります。申請者(自分)で発行した請求書や領収書等は認められません。

具体的な提出書類/その他

本人確認書類と、通帳の写し(収入の証明のためではなく、給付金の振込先を知らせるため)も提出書類として必須ですが、これは法人向けや事業フリ向けの申請と同じですので、本記事では割愛します。詳しくはこちらをご覧ください。

雑所得・給与所得フリーランスが持続化給付金を申請する際の提出書類のまとめ

  • 前年の確定申告書、または 「特例A-1.確定申告を要しないこと及び収入金額に係る申立書」
  • 国民健康保険証の写し、または任意継続等の同等の保険に加入している証明
  • ①業務委託契約書、または業務委託契約相当であることを申し立てる申立書
  • ②支払調書、源泉徴収票、支払明細書など
  • ↑①と②いずれか一方(と、収入振り込みを証明する通帳の写し)だけでOK
  • 本人確認書類
  • 給付金振込先の銀行口座情報(通帳の写しなど)

申請の注意点

これまで説明してきた通り、雑フリ給フリ向けの持続化給付金の申請時の提出書類は、いろいろと複雑です。その分、審査にも時間がかかることが申請ガイダンスにも明記されています。長く審査の時間がかかることを想定した、余裕を持った資金繰りをしましょう。

申請受付開始は6月29日です。その前日28日の夜21時から申請Webページはメンテナンスに入り、翌29日の朝9時までメンテナンス時間となっています。つまり、6月29日朝9時が、正確な申請受付開始時間ということになります。

申請受付期間は2021年1月15日までです。申請受付開始後すぐに申請しなくても、時間の余裕はたっぷりあります。

雑フリ給フリ向けの提出書類はやや複雑です。持続化給付金事務局の申請ガイドをよく読み、ミスが無いように申請しましょう。ミスがあれば不備→修正→再審査の時間が余計に発生し、結果的に給付が遅れてしまいます。急がば回れ。

「申請ガイドに書かれていない書類でも審査が通るのではないか」と思って独自に判断した書類を提出するのは危険です。高確率で申請不備となり、給付への時間が長くなってしまいます。また、金額や署名などに著しい誤りがあった場合、不正受給で全額返還、もっと悪質な場合には全額返還+延滞税、最悪の場合には刑事告発もありえます。故意の虚偽申請でなければ最悪のケースにはならないと思いますが、なにはともあれ、申請ガイドに従って申請することが一番の近道だと思います。

スポンサーリンク