フリーランスの納税資金準備と納税スケジュール

フリーランスには給料の天引きというものがありません。自分で納税のための資金を準備しておき、スケジュールに従っていろいろな種類の税金を納める必要があります。

天引きされないということは、将来納める税金が一旦自分の懐に入るということです。何月にどれくらいの額の税金を納めることになるかをしっかり把握しておかないと、突然高額の納付書が送られてきてびっくりすることになります。

天引きされるサラリーマンにはこのようなことはありません。自分の懐に入るお金は全部自分のお金だからです。サラリーマンからフリーランスへ転向するとき、「フリーランスは将来の税金が一旦自分の懐に入るので、使い過ぎないように注意しよう」という意識改革が必要になってきます。

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納税スケジュールと納税額

例として、以下のようなフリーランスの場合を考えてみます。

売上--11,500,000円
仕入・経費--7,000,000円
所得(利益)--4,500,000円

所得(利益)の450万円が、このフリーランスの懐に入るお金です。ここで注意しなければならないのは、この450万円という数字はサラリーマンで言うところの「額面給与」であるということです。手取りではありません。自分の懐に一旦入っているのに、手取りではないのです。フリーランスは、そういう金銭感覚で資金管理をしなければいけません。

それでは納税スケジュールと納税額を見てみましょう。

納税スケジュール

なんやかんやとありますが、要するに昨年12月31日時点で手元にあるお金のうち、142万円はいずれ税金として納税するお金ですよ、ってことです。

手元の資金がギリギリの状態で事業を行っていると、納めるべき税金を一時的に使い込んでしまうことがあると思います。それでも納付期限までに納税額を用意できれば問題無いのですが、用意できなければ滞納となってしまいます。滞納にはいろいろなペナルティがあるので、避けたいところです。

もし資金が潤沢であれば、1月か2月頃にこれらの金額をあらかじめ計算しておいて、納税用の別口座に退避しておくと安全です。「使いすぎてるかな?」と心配することなく、確実に納税を行うことができます。

さてこの142万円という納税額、いかがでしょうか。450万円の所得(利益)があって自分の口座がそれだけ潤ったはずなのに、実際に手元に残るお金(=サラリーマンで言うところの「手取り」)は、差し引きの308万円ほどです。

これはちょうど、月給(手取り)22万円×12ヶ月+ボーナス44万円と同じくらいの水準です。フリーランスは450万円の利益があっても、実際はこれくらいの手取りです。

このようにサラリーマンとフリーランスでは金銭感覚が変わってくるので、フリーランスとして仕事をするときはサラリーマン手取り給与の1.5倍~2倍くらいの利益が出るようにする必要があります。「もらいすぎかな?」と思うくらいがちょうどいいのです。

手取り給与20万水準の生活をしたいのなら、フリーランスだと月の利益は30万~40万。手取り給与30万水準の生活をしたいのなら、フリーランスだと月の利益は45万~60万。

サラリーマンからフリーランスに転向した直後はまだサラリーマン時代の金銭感覚が抜けていないと思うので、上記のような換算式で利益を出していきましょう。何年もフリーランスをやってるとだんだん慣れてきて、こういう読み替えも必要なくなります。

3月の納税(所得税)

以下、それぞれの税金について簡単に解説します。

まずは所得税。

納付期限--3月15日
課税対象所得=所得(450)-基礎控除(48)-青申控除(65)-社会保険控除等(78)=259万
金額--\164,800
実質税率--3.7%

社会保険控除等はあくまで一例です。税額は、課税対象所得の259万円に超過累進税率を適用して計算します。所得から差し引ける控除は上記のようにたくさんの種類があるので、所得450万円に対する所得税164,800円の実質税率は3.7%とだいぶ低くなります。

厳密には、この所得税額164,800円の中には復興特別所得税(所得税額の2.1%)も含まれています。

所得税の納付期限は確定申告の申告期限と同じであり、その所得税額も自分で計算(または会計ソフトで計算)するため、滞納になる可能性は低いです。

3月の納税(消費税)

売上が1000万円以上の事業者は、消費税を納めなくてはいけません。

納付期限--3月31日
金額--\408,900
実質税率--9.1%

消費税率が10%の場合、税込ベースで手元に入ってきたお金のうち10/110が預かり消費税です。つまり、税込金額の9.090909…%≒9.1%が実質税率です。

事業者にとって、消費税というのは常に預り金です。この感覚が抜けていると、納める消費税額の多さにびっくりしてしまいます。特に、売上1000万円未満の免税事業者から課税事業者に切り替わった最初の年は、その額の多さに目ん玉が飛び出てしまいます。

消費税については本ブログのシリーズ連載で詳しく解説していますので、是非ご覧ください。

消費税が厄介なのは、赤字でも納税する場合があるということです。従業員を雇用しているときにそれが起こりえます。従業員への給与支払は消費税不課税にあたるので、営業利益(損失)と消費税額の計算は必ずしも一致するわけではありません。人件費の割合が大きい事業の場合は、特にそれが顕著です。

これは考え方の問題なのですが、「赤字でも納税」というよりは、「消費税納税分も加えた大赤字の数字が本来の事業損失」と考えるほうが正しいです。黒字でも赤字でも、消費税が常に預り金であることに変わりはありません。

消費税の納付期限は3月31日です。所得税の納付期限と半月ズレていますが、両方一緒に申告・納付すると手間が省けてラクです。

6月の納税(住民税)

所得税と消費税は確定申告と同時期に納付しますし、自分で税額を計算するということもあるので、精神的ダメージは比較的軽いほうです。

しかし、3月で「納税おわったぁ」と喜んでると、忘れた頃の6月に納税の第2波がやってきます。その1発目は、住民税。

納付期限--6月30日
課税対象所得=所得(450)-基礎控除(43)-青申控除(65)-社会保険控除等(76)=266万
金額--\269,300
実質税率--6.0%

税額は、課税対象所得の266万円の約10%です。所得から差し引ける控除は所得税のときとほぼ同じですが、微妙に基礎控除等が違います。この例の場合、所得450万円に対する住民税269,300円の実質税率は6.0%となります。

住民税は基本的に、自分で申告をする必要はありません。3月に所得税の確定申告をしておけば、自治体のほうで自動的に住民税額を計算してくれます。そして6月に、住民税決定通知書と共に納付書が送られてきます。

住民税のように、申告せずに自動的に税額が決定される方式を賦課課税方式と呼びます。申告しなくても税額を計算してくれるなんて、要らぬ世話をッッ!親切ですね。

でも、自分で申告したわけではないので、住民税がいくらくらいになるかを試算せず、何月に納付するのかも忘れていると、突然「27万円払え」とかいう納付書が届くことになるのでビビります。なにそれこわい、タカりですか、ユスりですか…。

というわけで、突然の納付書にビビることがないように、「住民税は6月に納付書がやってくる」ということを常に頭の片隅に置いておきましょう。税額は、課税対象所得の約10%です。

でも、さすがに6月一括納付が厳しい場合が多いので、6月・8月・10月・翌年1月の4期に分けて4分の1ずつ納付するのが一般的です。

6月の納税(国民健康保険料)

6月にやってくる納税の第2波。その2発目が国民健康保険料です。これがヤバい。とにかくヤバい

納付期限--6月30日
課税対象所得=所得(450)-基礎控除(43)-青申控除(65)=342万
金額--\499,560
実質税率--11.1%

国民健康保険料は税金ではありませんが、実質税金みたいなものです。

所得税や住民税と違い、所得から社会保険控除を差し引くことができません。そのため、課税対象所得に相当する額は所得税や住民税よりかなり高くなります。そして保険料率ですが、自治体によって微妙に差があり、40歳以上と未満で介護保険料の有無が変わってくるので、一概には言えません。大体9%~14%と考えておけばいいでしょう。

そんなわけで、なかなかの高額です。しかも、これも賦課課税方式なので、ある日突然納付書がやってきます。トドメはその時期。住民税と同じ6月なので、ダブルパンチで精神的ダメージは莫大です。

国民健康保険料も一括納付が厳しい場合が多いので、6月~翌年3月の10期に分けて10分の1ずつ納付するのが一般的です。

※国民健康保険料の納付スケジュールは自治体によって異なります。多くの自治体は6月~翌年3月の10期のパターンを採用していますが、6月~翌年2月の9期や、7月~翌年2月の8期(この場合は一括納付の納付期限も7月31日)というパターンの自治体もあります。

要するに、本当にヤバいのは確定申告時期の3月ではなく、住民税と国民健康保険料のダブルパンチが突然やってくる6月です。6月まじヤバい卍

8月と11月の納税(個人事業税)

所得が290万円を超える個人事業主には、5%の個人事業税が発生します。

納付期限--8月31日、11月30日(2期に分けて2分の1ずつ)
課税対象所得=所得(450)-事業主控除(290)=160万
金額--\80,000(1期につき\40,000)
実質税率--1.8%

課税対象所得の計算は簡単で、所得から290万円の事業主控除を差し引くだけです。それに5%を掛けた金額が個人事業税となり、これを8月と11月の2期に分けて2分の1ずつ納付します。

※一部特殊な業種の場合は、税率が低くなります。具体的には、畜産業・水産業・薪炭製造業は4%、あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業・装蹄師業は3%です。「装蹄師」って、馬の蹄に蹄鉄を打つ技術者のことらしいですね。特殊だ…。

個人事業税は、所得が450万円くらいだとダメージは少ないですが、所得が600万、800万と中堅事業者になるにつれてその牙を剥き始めます。逆に言えば、こいつがなかなかの金額になってきたら中堅の仲間入りということになりますね。

総括

フリーランスにとっての所得(利益)は、サラリーマンで言うところの額面給与です。税金が天引きされないので、自分で納税資金を確保しておく必要があります。

その納税資金は、所得の30%~40%ほどを想定しておくといいでしょう。実際には一概に何%と言えないところがあるので、きっちり管理したい場合は1月か2月の段階で全ての税額を計算しておき、別口座などに退避しておくと安全です。

納税インパクトが一番ヤバいのは6月です。6月に届く納付書にビビらないように、心とお金の準備をしておきましょう。

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