見す剣は最強の剣
ぷよぷよプロゲーマーKuroroが語る、ミスケンについての楽しい話。
ミスケンの魅力についてはKuroroが動画の中で存分に語っています。Kuroroやくまちょむがミスケンのことを好きすぎていつも大笑いしてたのは有名な話。
ある日、Kuroroとくまちょむがミスケンのホームゲーセンである横浜のセブンアイランドに前入りしてミスケンを待ってたときのこと。夕方になりミスケンが現れると、興奮したKuroroは
ついに来やがッた!
とうとう来やがッた!!
ミスタ~~BIGッッ!!!
と叫んだという。ミスターBIGて何やねんw
伝説のビデオ
このインタビュー動画の中で語られてるミスケンの対戦ビデオのタイトルは
見す剣は最強の剣
といいます。その変なタイトルはKuroroが付けたもので、ビデオテープのタイトルラベルのところに筆ペンで書かれていました。
マスターテープは今は現存していないんですが(後述)、こんな感じのビデオテープでした。「見」のハネの部分が異常に長く、Kuroroの興奮っぷりが想像できます。
インタビューでも語られている通り、このビデオはくまちょむらがダビング(※)しまくって関東や名古屋で広く出回った後、マスターテープを関西人である僕が譲り受けることになりました。僕もそれを何十本と複製し、関西中に配りました。
当時のビデオテープ(VHS)はアナログのテープなので、今のように簡単にコピーすることができません。2台のビデオデッキを繋ぎ、再生機で再生した映像と音声を録画機で録画するという原始的な「ダビング」と呼ばれる方法でしかコピーできませんでした。ビデオテープは再生するごとに少しずつノイズが入って劣化していくので、マスターテープから数個の2次マスターを作り、2次マスターから配布用の3次データを複製するという方法で、劣化を最小限に抑えていました。
僕自身、このビデオは毎日何回も繰り返して見ていました。当時の上級プレイヤーも何十回何百回と見て、ミスケンのプレイを研究したと思います。それほどまでに、当時のミスケンのプレイは他のプレイヤーと圧倒的な差がありました。
その内容は、2020年の今から見れば当たり前のような技術の詰め合わせですが、当時は他の誰もやっていないような技術をミスケン1人だけが会得しているような状態で、他の人がどれだけその当時の技術を磨いたとしても辿り着けないような、本当に別次元の内容でした。
よく都市伝説でもあるじゃないですか、ネアンデルタール人がネアンデルタール人のままなら何千万年経っても今の人間の知能を獲得することはできなかった。ある時期に宇宙人の介在があったからこそ、今の人間が高度な知能を持つように飛躍的に進化したのだ、と。そこに見るような、進化の飛躍。ミスケンのそれは、まさに進化の飛躍でした。
この伝説の「見す剣は最強の剣」を基点として多くのプレイヤーが研究し、その技術はいろいろな人を経て現在のぷよにまで引き継がれています。今のプレイヤーが組んでいる連鎖や手筋には全て、ミスケンの遺伝子が組み込まれていると言っても過言ではないでしょう。今の自分のプレイは誰のプレイを参考にしたか、参考にされた人もかつては誰のプレイを参考にしていたか、…と辿っていってみて下さい。必ずミスケンに行き着くはずです。
強いプレイを共有しようという価値観
インタビューの中でこういうやりとりがありました。
ビデオをいろんな人に配るってのはどういうことですか?
みんなで強くなろうぜってことですか?
楽しもうぜってことですw
業界のことを考えてというか、意図してないでしょうけど。
自分たちのものだけにしようという考えは無かったわけですね。
確かに、こんな秘技が収められたビデオがあったとしたら、自分たちのものだけにしようとするか、逆に業界のことを考えてオープンにするか、という軸で考えるのが普通かもしれません。
でもぷよ界というところには、こういう秘技を自分たちのものだけにしようという考え方はありません。じゃあオープンにすることは業界の発展を考えてのことかというとそれも微妙に違って、もうとにかくこんな面白いモノはみんなで見よう!という純粋な気持ちがただあるだけなんです。
ゲームがe-sportsと呼ばれるようになってからは特に、強くなることはイコール賞金であったり名誉であったりと、何かと俗物的な価値に替えられがちです。しかし、ぷよぷよの真の源流にあるのは、「強い奴は面白ェ、自分も強くなれるともっと面白ェ!」という根源的な価値観だと僕は思います。
そしてそれは、Kuroroがこのインタビューで語る中で、存分ににじみ出ていると思います。ミスケンの後ろで大笑いしてた話も然り、その当時のことを今でも楽しそうに語ることも然り。
僕も、彼らの価値観を見て育ちました。僕がある意味での地域のリーダーをやっていた2005年前後は、そういう価値観を後世に伝えようと考えて活動していました。「強い奴」「強いプレイ」を大笑いするほど面白いと感じる価値観。それさえ芯にあれば、技術はきっと自然に付いてくるはずです。
マスターテープの行方
3年ほど前に引っ越しするときに、古い持ち物を全部捨ててしまいました。その中に「見す剣は最強の剣」も含まれていたのを覚えています。まさか2020年にもなって話題にのぼるとは思っていなかったので…。
ビデオテープに書かれた筆ペンの題字はもう見ることは出来ませんが、映像自体はネット上に残っていました。
2020年の現在から見ると少し内容には物足りなさを感じますが、これ、1999年の対戦ですぜ? 21年前なんですぜ?
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