フリーランスと個人事業主の違い

5月 24, 2020

フリーランスという言葉と、個人事業主という言葉。似たような意味合いで使われるこの2つの言葉、違いは何なんでしょうか?

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事の発端は、持続化給付金

コロナウィルスによる経済悪化の対策として、持続化給付金という制度が設けられました。その趣旨は次のようなものです。

Q1.給付金の概要について。

売上が前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、中小法人等の法人は200万円、フリーランスを含む個人事業者は100万円を上限に、現金を給付するものです。様々な業種、会社以外の法人など、幅広く対象としています

経済産業省:持続化給付金に関するよくあるお問合せ

持続化給付金については、以下の記事もご覧ください。

ここで問題になってくるのは、給付の対象者となる「フリーランスを含む個人事業者」という文言です。個人事業者とは事業所得を得ている人のことであり、税制の言葉で言うなら、事業所得を確定申告している人、ということになります。

しかし、この持続化給付金の給付要件が発表されてから、多くのフリーランスが困った状況に陥りました。彼らは、事業所得ではなく、雑所得で確定申告をしていたのです。

所得区分

事業所得や雑所得とは何なのか。それは、以下の10の所得区分の1つです。

事業所得 事業を行って得る所得。フリーランスの仕事など。
不動産所得 土地や建物の貸付から生じる所得
利子所得 預貯金の利子などの所得
配当所得 株の配当金など
給与所得 勤務している会社からもらう給料
退職所得 勤務している会社を退職したときの退職金
譲渡所得 土地や建物や株などを譲渡したときの所得
山林所得 山林を伐採して譲渡したことなどによる所得
一時所得 賞金や懸賞当選金などの所得
雑所得 上記以外の所得

出典:国税庁 所得の種類と課税方法

事業所得とは事業を行って得る所得のことであり、つまりはほとんどの仕事がこれに該当します。

一方の雑所得は、他の9種類の所得に該当しない所得のことを言います。国税庁によれば、以下の説明がなされています。

雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。

国税庁:雑所得

確定申告書のどこに数字を記入したかで、事業所得なのか雑所得なのか判断することもできます。

確定申告書A
確定申告書B

確定申告書Bの「事業:営業等 ①」のところに金額が記入されていれば、事業所得があるということになります。

確定申告書Aは確定申告書Bの簡易版で、そもそも事業所得を記入する欄がありません。つまり、確定申告書Aで確定申告をした人は、事業所得が無いということになります。

持続化給付金の給付要件は、まずその人に事業所得があるということが大前提です。しかし前述した通り、事業所得ではなく雑所得で確定申告をしていたフリーランスが多数居ることがわかり、この雑所得フリーランスの問題が浮上してきました。

フリーランスとは

そもそも「フリーランス」という言葉は、所得区分でもなければ、法律上の言葉でもありません。会社に勤務して給与を得て生計を立てるサラリーマンと対比した形で、会社には属せずに自分の力で報酬を得て生計を立てる生き方をフリーランスと呼ぶようになりました。

ここで、Wikipediaの「フリーランス」の説明を見てみましょう。

フリーランス(英: freelance)は、特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主である。

(中略)

日本の税制上におけるフリーランス業の収入は営業等所得として、経費を差し引いた分から決算して確定申告する必要がある。

Wikipedia:フリーランス

この文脈からは、「フリーランス」と「個人事業主」がイコールであり、利益を事業所得として確定申告している人こそがフリーランスである、と読み取ることができます。

持続化給付金の給付対象となっている「フリーランス」も、おそらくその意味だと思います。「事業所得を得ている人(=フリーランス)に対して支援をしよう」という趣旨でこの制度を設計し、その意味で「フリーランスも対象です」と言ったのだと思われます。

しかし、「フリーランス」というのは正式な法律用語ではありません。そのせいで、この言葉の発信側と受け取り側で、認識の相違が発生してしまいました。

僕の場合

僕は8年ほど個人事業主をしています。当初から「私は個人事業主です」と言ってきました。ちょっとカッコつけて言いたいときは「フリーランスです」と言うこともありましたが、概ね「個人事業主」で通してきました。

でも、ここ最近は、敢えて「フリーランス」という言葉を使うようにしています。明確に意識してそれを言い始めたのは半年前。まさに、このブログの執筆を始めたのがきっかけでした。

この記事にも書いたとおり、少し前から「わたしはフリーランスだ。インフルエンサーとなって、ネットビジネスで稼いでいくんだ」というキラキラしたtwitterアカウントが散見されるようになり、じゃぁそれってどんなものなのかというのを体験してみようと思ったのがブログを始めたきっかけです。

このブロガー界隈というところではほぼ全員が「フリーランス」を名乗っているので、じゃぁ僕ももともと個人事業主だから、ここは「フリーランス」と横文字に言い換えておこうかな、と。そうしておいたほうがtwitter上でブロガー界隈に少しでも多く(良くも悪くも)認知されるかな、と思って。

フリーランスという言葉への違和感

僕は先ほどのWikipediaや政府の見解と同じく、「個人事業主=フリーランス」という認識でいました。だから横文字に言い換えるのは何の問題もなかろう、と。

しかし実際に他のフリーランスの方と接してみて、かなり違和感を感じました。

彼らの言う「フリーランス」とは、ブログを書き、執筆業をし、あるいは動画配信などをして、自分自身をタレントのように売り込むことで影響力を増やしてさらなる利益に繋げていく、いわば「インフルエンサー」の言い換えのような意味に聞こえました。

一方の僕は、何を書くわけでもなく発信するわけでもなく、さらに言うならネットの力を使って営業をかけるわけでもない、言わば「toB 個人事業主」です。

だから、発信とネットビジネスこそがフリーランスであると認識している人達の中で「僕もフリーランスです」って言うと、「えっ?(それって違うんじゃ…?)」っていう微妙な空気が流れてしまいます。

でも僕は、「toB 個人事業主」の人達もたくさん見てきました。企業からの継続案件で安定した収入を得ているプログラマー、旋盤加工会社から独立して個人で旋盤加工業をやってる人、工事現場の足場組み立て業を専門に個人で工事をしてる人、保険会社から独立してフリーの保険業を行ってる人、などなど。

僕が見てきた「フリーランス」とはそっちの意味だったんですが、どうやら近年はネットビジネスをするインフルエンサーのことを「フリーランス」と言うようだ。

言葉というのは時代とともに変わるもの。それならそれでいい。僕がフリーランスを名乗るのに多少の違和感は感じていたけども、僕は僕。何と呼ばれようが、僕の生き方は、これ。

そこに雑所得フリーランス問題が起こった

「フリーランス」というのは別に法律用語でもなんでもないのだから、呼びたいように呼べばいい。言葉の解釈の違いなんて些細なものだ。今まではそれで何の問題もありませんでした。

しかしこの度、「フリーランスに持続化給付金100万円を給付します」という制度ができたことで、政府の認識と一般の人との認識の相違が、はっきりと浮き彫りになってしまいました。雑所得で確定申告をしていたフリーランス、つまり個人事業主ではないフリーランスが多数居ることが判明したのです。

僕の認識では「個人事業主=フリーランス」だけど、現在の一般の言葉の認識では「個人事業主ではないフリーランス」という立場が存在します。

フリーランスというのが今の意味に変化した後にネットビジネス等を始めた人のうちのいくらかは、雑所得による確定申告を選択し、そしてフリーランスになりました。もう今の意味においては、所得区分の違いは問題ではありません。会社に属せずに自分の力で稼ぎ始めたことこそが、「我、フリーランスなり」というわけなのです。

英語「freelance」の語源は、中世に遡る。中世は王や貴族は主力となる騎士を中心とした封建軍の補強として、戦争の度に傭兵団(フリーカンパニー)と契約して戦争に臨んだ。この中には正式に叙勲されていない騎士(黒騎士)や傭兵団を離れ戦場に臨む兵士がいた。当時は槍騎兵 (lancer) が自分の従卒として歩兵や弓兵を連れている形態が多かったため、契約の際には槍の本数=1戦闘単位としてカウントされた。まだ敵勢力と契約を交わしていない (英: free) 戦闘単位 (英: lance) を指す言葉として「freelance」が用いられるようになった。当時は兵士を指していた「free lancer」が、近世以降組織を離れて働く状態を指す言葉に変化した。

Wikipedia:フリーランス

フリーランスの「ランス」とは、つまり槍。ホーリーランスとかと同じアレです。つまりフリーランスは独立槍騎兵。カッコいいじゃありませんか。「個人事業主」とかいうダサい日本語よりはるかにカッコいいです。

言葉がカッコよすぎるあまり、フリーランスが負うべき税制上の責任が何なのかということが、いつしか忘れ去られてしまいました。その結果、「所得区分? なんだか知らないけど雑所得でいいや」という選択をしてしまった人が多かったんじゃないかと、僕は予想しています。横文字がカッコよすぎた。

税務署の指導

フリーランスの人が初回の確定申告で税務署に相談に行ったとき、「雑所得で申告してください」と言われた人が多数居るようです。特に、執筆業、司会業、演奏家などの職業の人の多くが、そう指導されたと言っています。
本来、事業所得か雑所得かの区別は、職業の内容で決まるものではありません。その事業が継続的であり、生計を立てるための柱となるだけの収入があり、事業を行う上での全ての責任が自分に帰する場合に、事業所得であると認められます。
従って、「フリーランス」と言えるほどに「継続的かつ独立的」であれば、それは事業所得であるはずです。にもかかわらず税務署が「雑所得で」と指導してきた背景は不明です。
個々の例で違いはあると思いますが、強く雑所得を勧めてきたのか、帳簿の記帳義務が無い雑所得のほうがラクですよと親切心で勧められたのか、それぞれの人で事情は異なってくると思います。

雑所得フリーランス問題の行方

いろいろな認識の相違があったせいで、雑所得フリーランスの人が給付金を受けられなくて困っています。これをただちに「雑所得も対象」としてしまうと今度は逆に、生計を立てるための収入とは言えない程度の小遣い稼ぎの雑所得に対しても給付がなされてしまいかねません。

コロナウィルスという非常事態において、そのあたりの審査は緩くして、給付が必要無さそうな人も含めてとりあえず給付すべし、という意見があります。

しかし、そのように対象を広げてしまうと、対象者が多いがゆえに、限られた予算の中では1人あたりに配る給付金が下がってしまうという危惧があります。本来本当に給付金を必要としている人に行き渡る金額が減るのです。だからこそ、制度の設計はこの非常事態であるといえども慎重でなければなりません。

本日(2020年5月11日)の国会答弁で梶山経済産業大臣は、「このような給付金がもらえないフリーランスの人がたくさん居ることを認識している。今週中に対策を取りまとめる」という趣旨の回答をしました。

2020年5月24日追記:現時点で、6月中旬頃から申請開始になる目処で、給付対象者の範囲が拡大されると言われています。雑所得フリーランスと給与所得フリーランスがその対象に含まれるようです。詳細はまだ未定です。)

そのあたりの結果は、また追って別の記事にしたいと思います。

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