流行に乗り遅れた虚業師の話
虚業師。何のビジネス的実績を持っていないのに、「私はすごい」と吹聴して、その「すごい」のノウハウを情報商材などの形で売りさばく輩。中身が無いものを、さも価値のあるかのように見せかけて売り付けてくる虚業師は、ネット上にもたくさんはびこっています。
虚業師は主にオンラインサロンのようなものを運営し、カモになる信者達を「会員」という形で集め、少額から高額までさまざまな中身の無い情報商材をその信者達に売ります。
そんな虚業師のオンラインサロンで人生を転落させてしまった信者の話はこちら↓。
多くの虚業師は、虚業師同士でコミュニティを形成し、SNSが普及した現代でどのような方法でアピールすれば信者がホイホイ集まってくるかを日々情報交換しています。結果、似たり寄ったりの虚業師がたくさん出てくるわけです。「twitterを伸ばす方法」だとか「会社を辞めて自由に稼ごう」だとか、信者を搾取するための甘い言葉を吐いて。
しかし、そのような(ある意味の)流行に乗り遅れた、古いタイプの虚業師もたまに居ます。彼は流行の虚業師集団の仲間に入れてもらえなかったのでしょうか? いや、古かろうが新しかろうが、我々真っ当に生きてる一般人にとっては迷惑な存在なんですけどね。
日本eスポーツ連合(JeSU)とは
今回その「流行に乗り遅れた古いタイプの虚業師」を紹介するにあたって、前提知識として日本eスポーツ連合(JeSU)について軽く触れておきます。
2018年頃から、ゲームを競技化した「eスポーツ」というものが社会的に認知されるようになってきました。このeスポーツというものをより発展させるために、当時の「日本eスポーツ協会(JeSPA)」と「日本eスポーツ連盟(JeSF)」と「e-sports促進機構」の3団体が1つに統合され、大きく一本化された日本eスポーツ連合(JeSU)が誕生しました。
しかし、一本化されたあとも、別の団体「日本eスポーツリーグ協会(JeSA)」や「日本esports促進協会」が設立されたり、本体のJeSUとは無関係なところで「○○県eスポーツ連合」というのが独自に設立されたりして、このような団体の統合・分裂の構図は複雑さをきわめています。
この記事では、そういう個々の名称を特に覚えていただく必要はありません。ポイントなのは、黎明期にバラバラだった団体が1つに統合されたり、逆に複数に分裂したりというのはどこの世界でもよくあるということ、そして、何やら似たような名称の団体がたくさんあって、業界をよく知っている人でも混同しやすいということ。
本件で紹介する虚業師は、そういう「乱立する団体」のうちの1つを名乗ってきました。
あるテレビ番組にて
あるeスポーツのプロプレイヤーがテレビ番組に出演した際に、こういう発言がありました。
一般のスポーツのプロは、体力的なプロ。将棋や囲碁のような頭脳ゲームのプロは、頭脳的なプロ。しかし我々eスポーツのプロは、体力と頭脳を両方使うプロなんです。
この発言は当時プチ炎上しました。ゲームの競技者ごときが他の由緒あるスポーツや頭脳ゲームのことをバカにしているのか、と。
実際のところ、このプロプレイヤーの発言の前後の文脈を見ると、そのように他の競技をバカにしたという意味合いは感じられませんでした。ただ、eスポーツというものをもっと多くの人に認知してもらいたいという気持ちが前に出過ぎたためでしょうか、少々言葉を誤った感はありました。
賛否両論あったこの発言ですが、ここである団体のtwitterアカウントが謝罪文をツイートしました。その団体は、先に紹介したような「日本○○eスポーツ○○」のようないかにも実在するかのような名称を名乗っていました。ここでは(特定を避ける意味で)、その団体のことを仮に「V協会」と呼ぶことにします。
このたびは、先日のテレビ番組にて、eスポーツプレイヤー○○の発言が軽率であったことをお詫びいたします。
いやまぁ、そんな悪いことを発言したわけじゃないし、謝罪するほどでもないんじゃないか? と思ったんですが、アカウント名をよく見ると、実在する統一団体JeSUに酷似しているけど微妙に違う名称。ん? なんじゃこりゃ?
V協会の正体
いろいろと検索して、V協会のホームページを発見することができました。
「協会設立のご挨拶」のようないかにもらしい挨拶文がありましたが、アクセス数や記事数、そして書いてあることの内容が、とてもまともな団体とは思えないチープなものでした。
eスポーツ、つまりゲームというのは、視覚と聴覚の健康があってこそのものです。それら視覚や聴覚を鍛えることによって未来のeスポーツプレイヤーを育成し、業界に貢献していく…。何やらそのような理念が掲げられていましたが、活動内容がどうもよくわからない。
構成員は代表理事1名だけ。その代表理事も、実名ではないペンネームのような感じの名前。「V協会」と仰々しく銘打ってはいますが、一般社団法人でも一般財団法人でもなく、ただの「協会」。
怪しさ満点ですね。そして怪しさの極致だったのが、年会費5000円というところ。年会費を払えば講習会などに参加できるようです。その代表理事は専属トレーナーも兼ねているとのことでしたが、そんな講習会自体、実在するかどうかわかりません。
もうおわかりですね。そう、これは虚業師です。
eスポーツという名にあやかり、いかにもらしい団体をでっちあげ、中身の無い講習会に招くために年会費を搾取する。まるで権威のある団体であるかのように、何の関係も無いプロプレイヤーのテレビ番組での発言を勝手に謝罪する。あの謝罪ツイートは、そのためのクサいアピールだったわけです。
先ほどの代表理事の名前で検索すると、類似アカウントや類似サイトがわらわらとでてきました。
どうやら視覚聴覚の知識があることは本当のようで、このV協会以外にも「目の健康」みたいな感じのサイトがいくつかありました。他には、ご自身の趣味の一環でしょうか、神社仏閣を訪ね歩く的なサイトもありました。
そしてそのいずれもが、代表理事1名だけの協会を設立し、年会費5000円を募っていました。
お前、完全にやってるやん。
ただ「協会」を名乗るだけなら、公的機関に届出は必要ありません。「設立」も何も、名乗った時点で設立です。てめェ1人の協会を設立して、ご丁寧に設立のご挨拶まで載せて、ご苦労なこってす。
昔はよく見かけたタイプの虚業師
ネットが普及し出した199x年~2000年代初頭にかけて、このタイプの虚業師はちらほら見かけました。まだSNSというものが無かったので、まずはサイトを作り、いかにもらしい「協会」などの名称をちりばめて、会費を払わせるという形態。オンラインサロンの原型といえるかもしれませんね。
V協会のサイトは、アクセスカウンターが付いていたり、ページデザインのCSS的な雰囲気が昔風だったりと、いろいろと懐かしさに溢れていました。
現代の虚業師は、SNSをふんだんに使っていろいろな手法で信者から金を搾取します。そのメソッドは虚業師達の間で共有され、日々狡猾になってきています。
V協会はそのような流行に乗り遅れてしまったのでしょうか。最新の搾取方法を教えてくれる仲間もおらず、20年前の方法でいまもせっせと1人で詐欺活動。なんだかちょっと、ほっこりしました。
ほっこり…するかボケェ!
こんな怪しいサイトの会員になっちゃダメですよ。詐欺にはご注意を!
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