ドラゴンランス 秋の黄昏の竜/読書レビュー
小説「ドラゴンランス」をもとにしたコミック「ドラゴンランス 秋の黄昏の竜」が発売されたので、買いました。もともと小説だったものを漫画にしたものです。
ドラゴンランスとは
『ドラゴンランス』シリーズ(Dragonlance)は、テーブルトークRPG『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』(AD&D)の設定を基盤として書かれたファンタジー小説の連作。および、その小説の世界を再現するAD&D用設定集とシナリオのシリーズ。それまでのAD&Dにおける世界設定やシナリオを刷新するものとして企画された。
Wikipedia:ドラゴンランス
小説は主としてマーガレット・ワイスとトレイシー・ヒックマンが執筆した。ワイスとヒックマンによる『ドラゴンランス戦記』三部作(邦訳は全6巻)に始まり、『ドラゴンランス伝説』三部作などの続編が多数発行され、全世界で累計5千万部以上を売り上げる等大ヒット作品となり、エピックファンタジー小説ブームの火付け役ともなった。
というわけで、ドラゴンランスというのはいわゆる剣と魔法とドラゴンが出てくる系の物語。膨大な量の長編小説で、そのうち以下のシリーズが日本語に翻訳されて発売されている。
ドラゴンランス戦記(原題:Dragonlance Chronicles)
全3巻(日本語版は全6巻)。1984年。
- 廃都の黒竜
- 城砦の赤竜(1,2巻の原題:Dragons of Autumn Twilight)
- 氷壁の白竜
- 尖塔の青竜(3,4巻の原題:Dragons of Winter Night)
- 聖域の銀竜
- 天空の金竜(5,6巻の原題:Dragons of Spring Dawning)
日本語版は、富士見書房から1987年、アスキー・メディアワークスから復刻版が2002年に発売されたが、いずれも絶版。電子書籍(Kindle)は以下から入手可能。
この「戦記」が、全シリーズの始まりの物語となっている。
ドラゴンランス伝説(原題:Dragonlance Legends)
全3巻(日本語版は全6巻)。1986年。
- パラダインの聖女
- イスタルの神官王(1,2巻の原題:Time of the Twins)
- 黒ローブの老魔術師
- レオルクスの英雄(3,4巻の原題:War of the Twins)
- 黒薔薇の騎士
- 奈落の双子(5,6巻の原題:Test of the Twins)
日本語版は富士見書房から1989年、アスキー・メディアワークスからの復刻版が2004年に発売されたが、いずれも絶版。電子書籍(Kindle)は以下から入手可能
「戦記」から5年後の世界を舞台としたもの。「戦記」と「伝説」で、ドラゴンランスシリーズは一旦完結する。
夏の炎の竜(原題:Dragons of Summer Flame)
全2巻。1995年。
- セカンドジェネレーション(原題:The Second Generation)
- 夏の炎の竜(原題:Dragons of Summer Flame)
日本語版はアスキー・メディアワークスから2003年に発売されたが、現在は絶版。電子書籍(Kindle)は以下から入手可能。
「戦記」から32年後の世界を舞台としており、「戦記」の主人公たちの子供の世代が活躍する物語となっている。「セカンドジェネレーション」はその導入となる短編集で、そのうちいくつかは1987年頃に既に書かれていたものも含まれている。
その短編集を導入とした上で、本筋の物語「夏の炎の竜」へと繋がっていく。「戦記」の原書3巻のタイトルがAutumn, Winter, Springだったことに対比して本書がSummerとなっている点も、10年ぶりに発表されたこの新作に興奮するファンの心をさらにかきたてた。
魂の戦争(原題:The War of Souls)
全3巻。2000年。
- 墜ちた太陽の竜(原題:Dragons of a Fallen Sun)
- 喪われた星の竜(原題:Dragons of a Lost Star)
- 消えた月の竜(原題:Dragons of a Vanished Moon)
日本語版はアスキー・メディアワークスから2008年に発売。電子書籍(Kindle)は以下から入手可能。
「戦記」から70年後の世界が舞台。「戦記」の孫の世代にあたるが、長命なエルフやドワーフなどは「戦記」の時代からまだ存命だったりもする。
その他多くのシリーズ
物語のいわゆる「本筋」は以上の4つ。この他に短編集やサブストーリーがいくつか日本語に翻訳されている。
もともとドラゴンランスシリーズは、テーブルトークRPG『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』(AD&D)の設定を基盤として、複数の作家が独自の物語を書いていくというスタイル。その中でも特に、マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマンが執筆した上記4つのシリーズ(英語版の原書ではこの先もさらに存在する)が、いわゆる「本筋」とみなされている。
ドラゴンランスのあらすじと魅力
世界にいわゆる「悪」の雰囲気が少しずつ感じられるようになり、どこかで軍隊が終結しているという噂もある。そんな折、主人公のタニスら一行は、ふとしたことから悪の手先に追われることになり、やがてそれが世界を救う大冒険へと発展していく。
…という、よくあるストーリー。ただこの主人公の一行は、面倒くさい奴ばかり。
- タニス -- 一行のリーダー。冷静沈着な反面、「なんで俺がリーダーなんだ」とかいつも言ってて面倒くさい。
- フリント -- ドワーフのじじい。いつもぶつくさ言ってるだけの老害で面倒くさい。
- タッスルホッフ -- ケンダー(ホビットとかハーフリングの類)で、無意識に人のものを盗む。子供っぽく、話があちこちに飛びまくって会話が成立しにくい。面倒くさい。
- レイストリン -- 病弱で半分闇堕ちしてる魔術師。平気で人をバカにする態度とかいろいろ面倒くさい。
- キャラモン -- レイストリンの双子の兄で屈強な戦死。病弱な弟を過保護なまでに面倒を見る。面倒くさい。
- スターム -- 叙勲を受けた騎士。正義と名誉のためにとか言い過ぎてて面倒くさい。
こういう物語は美男美女を描いておけばそれなりにヒットするのかもしれないけど、ドラゴンランスはむさくるしいおっさんとか面倒くさい奴ばかり。ビジュアル的な魅力は皆無と言っていい。でも、読めば読むほど、それぞれの人間くさい(エルフくさい、ドワーフくさい)魅力が感じられてくる。
小説なので、最初に一気に登場するこの6人を文章だけで見分けるのが難しい。えっ、誰が誰だっけ? ってなる。6人だけでも厳しいのに、ここにさらにサブキャラが10人も20人も登場する。
物語の背景も壮大で、名称がちらっと登場するだけの地名や、何も詳しく説明されない過去の出来事の話、数百年前の歴史の話などが当たり前のように登場する。劇中の人物自身はそれらについてわかっていても、僕ら読者には全くわからんのよ。
でも、その壮大さが、いい。主人公をとりまく小さな舞台だけの話じゃなくて、この世界、この歴史、というのが確かに存在しているという背景が感じられる。もともとTRPGとして実際にプレイされた内容をもとにこの小説が書かれているので、話にご都合主義なところが無い。それぞれの人物がそれぞれの思いで行動しているというのがはっきりと感じられる。
「戦記」の終盤、ついに悪の軍隊のボスを倒すことに成功するが、その背後に居る「悪の神」は一旦退いただけ。各地での戦いはどれも完全に制圧したとは言えず、特に主人公パーティの1人レイストリンはもともと半分闇堕ちしてたところを完全に闇堕ちさせてしまう。そんなもやもやとした、何も解決してないような状態で「戦記」は幕を閉じる。
その闇堕ちしたレイストリンを中心に描いたのが、続編の「伝説」。これは今でも、シリーズ最高傑作と言われている。「戦記」ではほとんど詳しく書かれていなかった時代背景や神々の話も出てきて、さらにドラゴンランスの世界にのめりこむことができる。
そのようにして読者は、少しずつこのドラゴンランスの世界というものを知り、まるでそこの住人であるかのような感覚に陥る。そうなればもう、次の作品を読みたい、もっと新しい作品を読みたい、と思いまくるようになるわけですね。そう、それが僕です。
読み始めたきっかけ
今から30年以上前。当時中学生だった僕は、ドラクエとかそういうゲームだけでは飽き足らず、ちょっぴり大人が楽しむような小説の類にも手を出そうと思いまして。で書店に行ってみると、なんかいつも並んでるドラゴンランス戦記っていう小説がある。うむ、これにしてみよう。
しかしこれ、めちゃくちゃ難しい。前述のように主人公側のキャラクターが10人も20人も出てきて、しかも英語から日本語訳されたときの独特の表現が難解。
- お前さんが空を飛べるというのなら、わしはゴブリンじゃい
- いにしえの神々にかけて、おお、なんということだ
読みやすいライトノベルを想像してこの本を開くと、痛い目を見るぜ? 実際、当時の中学の同級生の1人もドラゴンランスを買ったんですが、1巻の途中で挫折してました。僕も、「戦記」6巻を1周読み終えた時点では、まだ人物の区別が付いてないような状態でした。
その後に続く「伝説」も買って読み続ける頃には、だんだんドラゴンランスが面白くなってきました。さすがシリーズ最高傑作。「伝説」を読破すると今度は、1周目ではよくわからなかったところをもう一度読み返してみようと思って「戦記」の2周目へ。おお、これってめちゃくちゃ面白いじゃないか!
そんな感じで中学時代は虜になったんですが、いくつかの短編集やサブストーリーがその後発売された後、いつまで経っても予告されていた続編が書店に並ばない。調べてみると、売上が少なかったため、出版元の富士見書房がこれ以上の続編を出さないことを決めたらしい。まぁそりゃそうか、こんな初心者殺しで難解な小説は売れんわな…。

というわけですっかりドラゴンランスのことは忘れてたんですが、2003年に新作「夏の炎の竜」がアスキー・メディアワークスから発売されるという情報をたまたま見つけた。ま、まじか! 僕はもう28歳ですっかり大人になったけど、子供の頃に読んだドラゴンランスの続編が! 鼻血出るほど興奮しましたよ。
しかも、当時の「戦記」「伝説」もハードカバーで復刻されるとのこと。もちろんだ、全部買うぜ!

しかし、やはり売上は伸びず、出版元のアスキー・メディアワークスは続編の予告をしていながらもそれが発売されることはなく、2010年にお蔵入りとなってしまいました。僕としては、2度目の「ドラゴンランス終了のおしらせ」を食らったわけです。
それからさらに10年。
またなにげなくネットを検索してたら、冒頭に紹介した「秋の黄昏の竜」がコミックという形で2020年に発売されるというではないか! 何度出版社が死んでも、ドラゴンランスは蘇る!
秋の黄昏の竜/読書レビュー
今回のタイトル「秋の黄昏の竜」は日本人にはなじみが無いですが、「戦記」1巻の原題「Dragons of Autumn Twilight」をそのまま日本語にしたものです。つまり、内容は当時のままで、小説をまるごと漫画にしたというもの。
つまりはアメコミです。ただでさえ登場人物は美男美女とは程遠い面倒くさい奴らばっかりなのに、さらに画風がアメリカンな感じのキツいやつです。
表情が読み取り辛く、小説のように微妙な背景や心情の描写が無い。そして、ページ数がかなり少ないということもあって、場面の移り変わりが速すぎて今どこに居るのかよくわからない。重厚な世界背景を感じ取ることができない…。
僕のように、元の小説を何周も読みまくったコアなファンでなければ、話を理解するのは難しいと思います。
僕はコアなファンなので続編も買いますが(電子書籍ではなく、紙媒体のコレクションとして)、初めての方はどうでしょうか。こっちのコミックから入って、フルバージョンの小説に移行していくというのもアリかもしれませんね。Kindleのおかげで、絶版となってる小説も全部読めますし。
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