金持ちだと偽るのは悪か/叶姉妹の場合
ブロガー界隈、虚業師界隈を見ていると、「自分はこれだけ稼いでいる」とプロフィールなどに掲げている人が多い。月収7桁だの8桁だの、借金からの逆転人生で資産何億だの、どいつもこいつも似たようなことばかり言っている。
本当のことを言っている一部の人を除けば、これらのほとんどは数字を盛っている。いや、盛っているどころか、全く稼いでいない輩も居るかもしれない。
ではなぜ数字を盛るのか? 答えは簡単だ。「稼いでいる」という自分を演出すれば、信者が集まりやすい。そして信者にこう説くのだ。「わたしのように金持ちになりたければ、まずはこの情報商材を買いなさい」とね。
では、金持ちだと偽ることは問答無用に悪なのだろうか?
その答は、日本最大の「ニセ金持ち」である叶姉妹が知っている。
叶姉妹とは
叶姉妹とはもちろん、あの大金持ちのセレブ姉妹のこと。テレビの向こう側で見る彼女らは、大豪邸に住み、きらびやかな服や装飾品に身を包み、立ち居振る舞いも言葉遣いまさにセレブそのもの。一説によれば、私服でもその総額は11億5000万円になるという。
お互いを「おねえさま」「美香さん」と呼ぶ二人だが、実の姉妹ではない。姉役の恭子さんの本名は小山恭子さん、妹役の美香さんの本名は玉井美香さんといい、ユニット結成当初は恭子さんの実妹の春栄さんを加えた3人グループのタレントだった。
そのことはWikipediaにも書かれており、別に秘密というわけでもない。
しかし、もっと事実を掘り起こせば、そもそも叶姉妹は大金持ちセレブですらない。いや、「金持ちでなかった」と過去形で言うほうが正しいだろうか。
もともと別々に芸能活動をしていた叶姉妹だが、あるとき「大金持ちというキャラ付けをしてタレントとして売り出してみてはどうか」という大人たちの意向を受け、今の形になった。本物の大金持ちではないので、何億円もするという服や装飾品も全て、テレビに出演するときだけに身に着けるレンタルだ。
その目論見は当たり、叶姉妹は売れっ子となった。そこで実際に金を稼ぎ、大金持ちとは言わないまでも、ある程度の収入は得たことだろう。彼女らにまつわる金持ちエピソードは虚実入り混ぜたものなり、いい意味でリアリティーも増してきた。
それは人を騙しているのか?
では、彼女らは人を騙しているのだろうか? 「偽っている」かと問われればYesと言うしかないが、それによって誰かが不幸になったりしただろうか?
否。テレビの向こう側の世界に居る大金持ちの叶姉妹は庶民の憧れであり、憧れることによって庶民は活力を得た。誰一人、嫌な気分になどなっていないはずだ。
彼女らの人間性もその理由の1つである。金持ちだからといって奢ることなく、他人を下に見ることも無い(と言っても本物の金持ちではないので当然だが)。そして、例えば「財布に金を入れたら入れた分だけ使ってしまうので2万円しか入れてない」という、どこか間の抜けたエピソード(これもキャラ付けの1つかもしれないが)も、彼女らを親しみやすいものとしている。
また、こんなエピソードもある。2016年、妹の美香さんは漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のファンであることを告白し、同年に開催されたコミケに一般客として参加した。お忍びで参加したわけではないので報道陣が殺到するなどの大混乱が危惧されたが、美香さんは「他の客の迷惑にならないように」と、コミケのことをあらかじめ勉強し、郷に入らば郷に従うの精神で、全力で細心の注意を払った。
コミックマーケット。漫画やアニメなどを題材とした二次創作物などの同人誌即売会。簡単に言うと、オタクの祭典。多くのファンが集い、数十万人規模の参加者が集まるビッグイベント。
通常、芸能人がコミケに来ると、大体バッシングを食らう。芸能人はオタクと呼ばれる人達をどこか下に見ているからだ。
でも叶美香さんの場合は違った。全然違った。セレブ度合いの差でいえば(たとえキャラ付けだったとしても)天と地ほどの差があるというのに、彼女は一切奢ることなく、敬意を払ってオタクの祭典であるコミケに参加した。そしてこの行動はのちに大絶賛された。
一方の虚業師は
一方、ブロガー界隈などで散見される虚業師はどうだろうか。
口を開けば「月収何百万」、サラリーマンなどの働く人たちを下に見下し、ダブルスタンダードに満ちた詭弁の数々。
そして、いざ「こいつは騙しやすいカモだ」というターゲットを見つけたら、信者として囲い込んで高額の情報商材を売り付ける。
人間性なんてものは皆無。自分が金持ちだというキャラ付けは全て、情弱なものから金銭を効率的に搾取するための演技だ。こういう虚業師連中に対してのみ言うならば、「金持ちだと偽ることは悪」というのは紛れもない事実だろう。
結局は人間性の違い
虚業師連中はこう言うだろう。「稼いでいる金額を少しくらい多めに言ってもいいじゃないか。それでみんながポジティブになるんだから。誰だって少しくらいは数字を盛ることもあるだろう? それをなんでもかんでも悪だと言うのか?」と。
そう言われれば確かにそれはある意味正しい。誰だって数字を盛ることはあるし、それを必ずしも悪だとは言い切れない。
でも、そこじゃねェんだよ、論点は。
数字を盛ってるとか盛ってないとかは大きな問題じゃない。そこを指摘してるのではなくて、ただ単に、お前ら虚業師は人間性が腐ってるだろ? と言っているだけなんだよ、我々は。
叶姉妹を見てみろ。あれだけ桁の外れた大金持ちを演じておきながら、弱者から搾取するようなことは一切しない。しかも、内面にちらほらとうかがえる善良な人間性。偽るか偽らざるかは問題じゃないということを彼女らは示してくれている。そして同時に、肝心なのは人間性であるということもハッキリと教えてくれている。
結局叶姉妹は金持ちなのか
ところで、叶姉妹は本当はどれくらいの金持ちなんだろうか。
Wikipediaにも真実は書かれていないし、どんな話も噂話にすぎない。数々のセレブなエピソードも虚実が入り混じっててどこまでが本当なのかわからない。
でも、それでいいじゃないか。誰もがうすうす気付いているけど、真実を追求することは無粋。プロレスがどこまで真剣勝負なのか、小倉優子は本当にこりん星出身なのか、Mr.マリックは超魔術師なのか、デーモン閣下は悪魔なのか、そして叶姉妹は大金持ちなのか。そんなこたァ、どっちでもいいじゃないか。
本当かどうかわからないままが一番いい。そう思わせるだけの人間性があるからこそ成せる技なのだろう。
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