マジカルストーンのデバッグ班
いわゆるデバッグ班のリストというのは、これのことですかな?
マジカルストーン騒動
マジカルストーンというのは、2016年3月27日にセガとは全く関係ないところから作られた、ぷよぷよに酷似したゲーム。
製作元は複数の会社を持っていたり名義上の代表者がコロコロ変わったりしていた(それは普通の会社でもよくあることです)ので実態とは違うかもしれませんが、ここではわかりやすいように、指揮を執っていた人物resolution氏の名前を取って「れそ社」と表現することにします。
マジカルストーンはリリース後1週間もしないうちにいろいろな問題が発覚し、大炎上。1ヶ月も経たないうちにサービス終了となり、短い歴史を閉じました。
どういう点が問題だったのか、どのように騒動になったのかについては、
こちらのリンク先に詳しく書かれています。
デバッグ班の存在
さすがにグレーと言わざるを得ないマジカルストーン。論点がたくさんあり、それぞれの論点についてもいろいろな意見があるところです。が、この記事はそういうことを語る場ではないので、脇に置いておきます。
大炎上に発展していく中で、このグレーなゲームを製作するために、なんと当時の現役ぷよらー70人以上がゲームのデバッガーとして関わっていたという情報がリークされました。それが事実なら大問題。ぷよのコミュニティの大部分が法律上グレーなゲームの製作に加担していたというとんでもない大スキャンダルになります。
そのデバッガー70人、通称デバッグ班の名簿。世に公表されれば一撃のもとにコミュニティを葬り去るであろうこの恐怖のリストをどこからか手に入れた者が、「暴露するぞ」と脅しをかける一幕も見られました。しかし結局そのリストは暴露されず、誰にも知られないまま、マジカルストーンの存在と共に忘れ去られてゆくのでした。
結論から言えば、そのデバッグ班のリストは存在します。っていうか、僕自身がその70人のうちの1人です。冒頭に載せたリストは、僕がわざわざ全員の名前をExcelに打ち直して保管しておいたものです。
デバッグ参加の経緯
デバッグに参加することを承諾した人は、Skypeのグループに集められました。デバッガーと言っても開発者側とコンタクトを取ることはほとんどなく、「ベータ版を配布します。プレイしてみて、気が付いたところがあったら言ってください」というだけのものでした。
「このゲームはこのようにしたらいい」という発言もあまりできない(してもいいけど、開発者側が意見を取り入れるとは限らない)し、ゲームのコンセプトや今後の展望が説明されることもありませんでした。開発者側に寄り添ってゲームをデバッグするようなものではなく、単純にクローズドβのプレイヤー程度の位置付けでした。
冒頭のリストですが、そのSkypeグループへの「参加日」が3月2日の人が多いと思います。これは、いよいよ開発が最終段階に差し掛かり、今までほんの数人しか知らなかったマジカルストーンというものを多くの現役プレイヤーに打ち明けることと引き換えに、最後のデバッグの質を高めたいという意図があったのでしょう。
デバッグ班70人のうちほとんどは、この3月2日にマジカルストーンの存在を知りました。僕自身もその3月2日でした。参加日が空白になっているのは、僕がSkypeグループに入った時点で既にグループの中に居た人です。そのログは見れないので誰がいつ入ったのかわかりませんが、空白のうち半数以上は、同じ3月2日でタイムラグで僕より早かっただけだと思います。
そんな中、「ちょっと面白いネット対戦ぷよ(のようなもの)があるな」ってことで、ほとんどの人はデバッグというよりは、単純に遊んでいただけでした。とりあえずSkypeグループには入ったものの、何も発言せず一度もプレイせず放置した人も多かったと思います。
僕は職業柄、どうしてもデバッグと聞くとうずうずするので、ぷよぷよ(のようなもの)としてのゲーム部分がどうかというよりは、初歩的なSQLインジェクション対策が出来ているか、ダイヤクリティカルマークで装飾されたUnicode文字が正しく表示されるか、SSL通信は出来ているか、などをチェックしました。
普通のリリース済のゲームなら、万が一そういうハッカーのような所業でサーバーを停止させてしまった場合、サイバーセキュリティ基本法や威力業務妨害に抵触しかねません。でもデバッグならやりたい放題。サーバーぶっ壊すつもりで不正アクセスしまくってやるぜ~。
実際、不正アクセスで無限に勝率を稼げるセキュリティホールを発見したので、すぐに報告しました。こりゃぁ楽しいぃ~。
ちょっと話は脱線しましたが、要するにデバッグ班70人の中には、協力に積極的だった人や消極的だった人がいろいろ混じっていたということです。冒頭のリストの「最終発言」のところは、入室の挨拶以外で何かを発言した最後の日付です。空白になっているのは、結局何も発言しなかった人です。
これを見る限り、大部分の人があまり積極的に発言していなかったということがわかります。ハッカー気取りだった僕はわりと最後のほうまでいろいろ発言してましたけど。(でも、ゲームのコンセプトとかそういう話は一切できていなかった)
背景がわかっていなかった
その3月2日にデバッグの協力を依頼されたとき、僕もさすがにいろいろ気になりました。これは法律上大丈夫なんだろうか、セガに筋を通しているのだろうか、誰かに迷惑をかけることになっていないだろうか、と。
でも、「法律的には大丈夫。セガにも容認されている」という説明を受けたので、まぁ大丈夫なんだろうなぁというくらいに思っていました。多分そのSkypeグループに入れば、もっと詳しい説明が聞けるだろうから、とりあえずデバッグに参加してから考えよう、と。
70人の他の人も多分同じ説明を受けていたと思います。とりあえずグループに入ってみたら、もっと詳しいことがわかるんじゃないかという軽い気持ちで。
でも、入ってはみたものの、何か怪しい雰囲気を感じ取って、何も協力しなかった人がだいぶ多かったようです。Skypeの特性上、「グループから抜ける」というのをわざわざやるほどのこともないので、そのまま放置した人がほとんどでした。
僕に関して言えば、まぁ言い訳になるかもしれませんが、resolution氏のことをあまり詳しく知りませんでした。彼がまだ18,9歳の頃にものすごくやんちゃをしていたのはこの目でも見ていたのですが、僕はそれからしばらくぷよを休止し、戻ってきたのがこの2016年の1月。そこから2ヶ月しか経ってないこの時期はまだ、最新のぷよ界の情報をあまり追いきれていませんでした。へぇ、10年前はやんちゃだったresolution氏が今では会社まで立ち上げて、こういう活動をしてるのか~。大人になったんだなぁ、くらいにしか。
そして炎上する
炎上後(3月27日リリースから1週間後の4月3日)の僕のtwitterより。
という感じです。大体この記事に書いた内容と同じですね。
とにかくこの事件を教訓として、コミュニティの末端ながらも一員である僕は、ぷよぷよという世界に関して特別な責務は背負っていないけども、わからないことがあったら尋ねる・明らかにする、という努力をできるだけしていこうと思うようになりました。
デバッグ班リストという楔に意味は無かった
僕の4月3日のツイートからもわかるように、かなり早い時期にデバッグ班の存在はリークされていました。そしてそれが不発弾のようにコミュニティの中に横たわって楔となり、誰もがデバッグ班のことについて発言できないような雰囲気になりました。
しかしそのデバッグ班リストは暴露されなかった。いや、暴露しても意味が無かったというのが正しいところでしょう。さっき僕がその一部を紹介したわけですが、これまで述べてきたとおり、デバッグ参加者全員がグレーな事業に深く関わっていてセガを転覆させようと企んでた…のとは全然違います。それは、リストやチャットログが暴露されることで逆に明らかになります。それがわかっていたからこそ、「暴露するぞ」と言ってた側も暴露しなかったのでしょう。
あれから4年。
ぷよぷよのことが好きすぎるが故に少し眉唾なモノを覗きに行ってしまった70人の人達。でも今のこの2020年現在、ぷよぷよのことが好きすぎる人達の欲求が満たされるのに十分なものが、正統なセガの手によって作られつつあります。
もう、メーカーとコミュニティのねじれは十分に解消されたと考えていいでしょう。お互いがwin-winになるように、これからもますます良好な関係が続けばいいなと思います。
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