スキャナ保存制度
本記事は、2021年以前の内容となっています。
2022年以降は電子帳簿保存法が改正され、レシート類をスキャンして電子化して保存するための要件が大きく緩和されています。
電子帳簿保存法の一種で、レシート類をスキャンして電子化して保存することを認める法律が、スキャナ保存制度です。厳密には「電子帳簿保存法の中のスキャナ保存に関する要件」ですが、ここではわかりやすいように「スキャナ保存制度」と呼ぶことにします。
大量のレシートを、もう封筒にもっさり入れて保管しておく必要が無い。果たしてそれは、便利なことなのか?
スキャナ保存の対象
スキャナ保存の対象となるのは、自分で発行した証憑書類(請求書など)と、他人からもらった証憑書類(いわゆるレシート)です。
帳簿の類はスキャナ保存できません。手書きで作った帳簿をスキャンしたり、弥生の青色申告などの会計ソフトで作った帳簿をそのままPDF化したりするだけでは、スキャナ保存とは認められません。認められないということは、元の原紙を破棄することは許されず、結局紙で保管しなければいけないということです。
スキャナ保存の要件
ふぁっ!? なにこれ、なんかいっぱいある…。
200dpiが云々とか24ビットカラーが云々とかは置いといて、気になる点を抜粋してみます。
【早期入力方式】国税関係書類に係る記録事項の入力をその受領等後、速やか(1週間以内に行うこと)
国税庁:電子帳簿保存関係パンフレットより抜粋
【業務処理サイクル方式】国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間(1か月以内)を経過した後、速やか(1週間以内)に行うこと
【タイムスタンプの付与】一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(中略)を付すこと
【入力者等情報の確認】国税関係書類に係る記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認できるようにしておくこと
【適正事務処理要件(1)】相互に関連する各事務について、それぞれ別の者が行う体制(相互牽制)
【適正事務処理要件(2)】当該各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続(定期的な検査)
おいおいちょっと待てや。たかが紙のレシートをスキャナでうぃーんと取り込むだけなのに、なんで「速やかに入力しろ」だの「タイムスタンプを付与しろ」だの「相互牽制する体制を作れ」だのと言われなアカンねん?
紙に比べて電子データは改ざんや偽造がしやすいから厳密に取り扱え、ということなのかもしれません。でもアンタ、紙のレシートだっていくらでも偽造できるぜ? いや、偽造しないけど。
要するに、「レシートの山から解放されますよ~」という餌で釣っておいて、レシートを取り扱うのを厳密化しようって魂胆でしょ。厳密なのは良いことだけど、もうちょっとやり方があるよね?
ちなみにこのスキャナ保存制度、2015年までは「原稿台と一体となったスキャナを使用すること」が要件に含まれていたのですが、2016年から制度が改正されてその要件が無くなり、スマホのカメラで撮影したものも認められるようになりました。……ってお前、改正するべきなのはそこじゃねェから!
というわけで、全くオススメできないスキャナ保存制度ですが、一応少し解説しておきます。
タイムスタンプの付与
タイムスタンプといっても、何月何日と書いておくだけでいいというわけではありません。然るべき機関からいわゆるハッシュ値を含むタイムスタンプの発行を受けて、スキャンしたデータを改ざん不可能なようにするという仕組みです。
まぁ改ざんなんてするつもりはないけど、この「然るべき機関」からタイムスタンプの発行を受けるには、年間10万円くらいの費用がかかります。無いな。無い無い。ありえない。
そんな高額な費用がかかるタイムスタンプですが、なんと弥生の青色申告では、無料で利用することができます! 弥生の年間サポート(年間8,000円)に加入しておく必要はありますが、年間サポートは弥生のソフトを継続的にアップデートするために必要なので、元々加入しておくものです。つまり、タイムスタンプに関しては実質タダです。
相互牽制
フリーランスの場合は自分1人しか居ないわけで、相互牽制ができません。でも、税理士が定期的に検査すれば、この相互牽制の要件を満たしているとみなされます。
しかしまぁアレですよね、ウチのブログのモットーは「税理士要らずのラクラク青色申告」。税理士付けなきゃスキャナ保存ができないなんて、そりゃぁ困りますよ。
事前申請が必要
スキャナ保存をするためには、税務署に事前申請をする必要があります。
国税庁
申請の期限は、スキャナ保存をしたい年度の開始日の3ヶ月前です。要するに、前年の9月30日までです。
結論
スキャナ保存は要らない子です。もう少し便利な形に法律が改正されればいいんですが、なんていうかこの、国の電子アレルギーというか、そういうのが根強いうちはまだまだ「便利」とは程遠いでしょう。残念。
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